
みなさんこんにちは!
シンワオートマチック株式会社の更新担当の中西です!
さて今日は
シンワのよもやま話~押出材が窓になるまでの全工程をほどく ✨~
アルミサッシ加工業は、「押出材」という無垢の棒や形材に“図面上の理想”と“暮らしの使い勝手”を同時に宿す仕事です。軽さと剛性、耐食性、加工性を兼ね備えたアルミは、住宅・オフィス・商業施設・工場・学校……ありとあらゆる建物の“顔”を形づくります。けれど、ショールームで輝く窓も、現場で雨風を受け止める窓も、その裏側には精密加工・組立・試験・物流・施工連携という膨大な段取りが存在します。本稿では、押出→切断→切欠き→穴あけ→塑性加工→表面処理→熱樹脂(サーマルブレイク)→組立→検査→梱包→出荷までを、現場目線で一気通貫に解きほぐします。
目次
アルミサッシの母材は、多くが6000系(例:6063、6061)。Mg-Si系は押出性◎/耐食性◎/熱処理で強度調整可というバランスの良さが武器です。
形状設計:ガラス溝、パッキン溝、ドレイン経路、ねじれ止めの二次曲げ剛性を押出断面で確保。
押出歩留まり:ダイスの寿命、肉厚ムラ、口開き防止。**設計段階で加工性(切欠き余地・治具逃げ)**を織り込むことが後工程の命綱。
寸法公差:±0.2〜0.5mmの世界で、**相手部材(スチール下地・木枠)**との“はめあい”を先読みします。
現場Tip:断面に“縦リブ”をさりげなく足すと、曲げ剛性↑/ねじれ耐性↑。同時に放熱フィンとしても効き、陽射しの熱だまりを抑えられます。
切断角度±0.1〜0.2°/長さ公差±0.3〜0.5mmを狙うと、組立での“ねじれ矯正”が激減します。
丸鋸+超硬チップ:バリ低減、潤滑切削で刃寿命↑/面粗度安定。
低温切断:夏場は素材温度上昇で伸びる→ミスト冷却・定尺補正で対処。
バーコード管理:切断時にロット・長さ・工程先を付与し、取り違いゼロへ。
切欠き:戸車・クレセント・ストライク受けなどの逃げ。NCルータ/パンチングで位置再現性を担保。
穴あけ:リベット・ビス・水抜きドレイン。ドレインはφ3〜5mm×複数段で毛細現象対策。
曲げ:ローラーベンダ/プレスで見付(みつけ)側の美観を崩さず、回復ばねを見越した型取り。
サーマルブレイク前提の“分割加工”:内外分割後に樹脂(ポリアミド)で連結する前提なら、加工順序の逆転が発生。治具は二系統用意。
現場Tip:切粉(スワーフ)管理は品質×安全×機械寿命の三方よし。真空吸引+静電気対策で夏の付着地獄を回避。⚡
陽極酸化(アルマイト):硬化層+耐食、クリア〜ブロンズ。封孔処理で染料の退色を抑制。
粉体塗装:厚膜で耐候・耐チッピング、色自由。端面アースと**膜厚(70〜100μm)**の均一化が勝負。
フッ素系焼付:海浜・高紫外域での超耐候。コストと納期のバランス設計が鍵。
表面処理前の脱脂・化成処理が甘いと、ブリスター・ピンホールが後から“花咲く”——前処理はケチらない。
内外のアルミを樹脂で絶縁し、**熱橋(ヒートブリッジ)**を遮断。
ストラット方式:内外形材にポリアミドストラットを圧入→ロールクリンチ。
樹脂注入方式:形材にポリウレタン発泡を流し込み固着(海外では根強い)。
U値改善/結露抑制はもちろん、遮音・振動減衰にも副次効果。
現場Tip:内外の長さ差(バイメタル効果)をモデル化し、夏冬の反りをシミュレート。長辺サッシの気密線の追従が安定します。
ガスケット:EPDM/シリコーンを押さえ圧1.0〜1.5mmで設計。寒冷地硬化/高温軟化を見越したデュロメータ選定。
グレージングビード:ガラス見込みに対し均等荷重で“面シール”。
コーキング:二面接着が基本、バックアップ材で三面を避ける。プライマーの塗り忘れは漏水の典型。
ドレインアップ(溝の立ち上がり)を適所に入れ、毛細上昇を遮断。
角継ぎ:コーナー金具+ピン+ビス/圧着機。対角寸法差0.5mm以内で“矩”を出す。
可動部:戸車・ヒンジ・クレセントは締結トルクを規定化。過締め=摺動不良の元。
気密材貼り:継目の“逆目”に注意、無理に伸ばさず突き当てで。
ガラス入れ:スペーサー(セッティングブロック)で荷重分配、片寄り破損を防止。
外観:1m離れて斜め45°で傷・打痕・色ムラをチェック。
寸法・対角:ゲージ・治具で即時判定、再調整のしろを残す。
機能:開閉力(N)/戸車走行音(dB)/施解錠の均一性。
気密・水密(社内試験):簡易ブースで散水+加圧、漏水位置の特定→対策ナレッジ化。
検査票+写真をセットでクラウド保存。トレーサビリティはクレームの盾であり改善の地図でもあります。️
角当て+二重ラップ、緩衝材はリターナブルへ。
立て積み基準:見付の弱い面を避ける/振動方向に梁を向ける。
現場時間指定:レッカー手配・監督在席時間とピン留め。
雨天時:仮設養生+置き場の“水勾配”を確保。
「梱包はコスト」ではなく品質工程。ここを磨くと歩留まりと信頼が同時に上がります。
開口寸法と下地誤差:±5mmを超える現場はスペーサー・シムで吸収設計。
防水:一次防水(外装)×二次防水(サッシ)の連結ディテールを事前合意。
引渡しチェック:クレセント位置/戸車調整/気密材の“継ぎ目”を立会いで。
現場の“想定外”は共有フォーマットで回収し、設計へフィードバック。ループを回すほど強くなるチームです。
押出の線一本、ドレインの小さな穴一つ、ガスケットの硬さ1°——微差の集合が、10年、20年先の快適を決めます。ミリの設計/水の経路/熱の橋を断つ。その三題を、図面・治具・手順・記録で支えるのが加工現場の誇りです。
次回は、リフォーム・高断熱化・大型建築・スマート化まで視野を広げ、売れる設計・長持ちのコツ・現場クレームの未然防止を深掘りします。